2018年度(第31回)社会福祉士国家試験過去問解説 第103問 ソーシャルワークのアプローチ

問題103 ソーシャルワークのアプローチに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。


1 解決志向アプローチは,クライエントが抱く解決のイメージを尊重し,その実現に向けてクライエントの社会的機能を高めることを目指す。
2 行動変容アプローチは,クライエントが,置かれている否定的な抑圧状況を認識し,自らの能力に気付き,その能力を高め,問題に対処することを目指す。
3 エンパワメントアプローチは,行動を学習の結果として捉え,正しく学習することにより問題行動を消去することを目指す。
4 フェミニストアプローチは,クライエント自らが問題を解決するための課題を設定し,あらかじめ決められた期間の中で課題を達成することを目指す。
5 課題中心アプローチは,クライエントが自らの人生のストーリーを理解し,新たなストーリーに書き換えていくことを目指す。

引用元: 第31回(平成30年度)社会福祉士国家試験 試験問題

ソーシャルワークのアプローチは頻出

ソーシャルワークのアプローチは、過去問を見てもよく出ていますね。この第31回試験を見ても、99問、101問、102問で出題されており、とにかく頻出です。

いつものように、中央法規の教科書を参照すると実に300ページ中50ページ近くにわたって記載があり、この分野はしっかりとした学習の必要が有ることを思い知らされます。 さて、教科書を通読(というか熟読)したうえで選択肢をざっと見てみます。

4 フェミニストアプローチは,クライエント自らが問題を解決するための課題を設定し,あらかじめ決められた期間の中で課題を達成することを目指す。

フェミニストという言葉は聞いたことが ある方は多いかと思います。フェミニン、という英単語が「女性らしい」というような意味ですね。female(フィーメイル)が女性という意味なので、派生してきた感じでしょうか。それはそうと、フェミニストというのは女性の権利を守るというか、性差による差別を解消していくような考え方、フェミニズムの立場をとる人、というようないみですので、アプローチとしてもなんとなく理解できるのではないでしょうか。

なお、この” クライエント自らが問題を解決するための課題を設定し,あらかじめ決められた期間の中で課題を達成することを目指す。 ”のは、課題中心アプローチの説明となりますので、誤りとなります。

5 課題中心アプローチは,クライエントが自らの人生のストーリーを理解し,新たなストーリーに書き換えていくことを目指す。

したがって、こちらの選択肢5も、必然的に誤りです。これは、ナラティブアプローチの説明ですね。
ナラティブアプローチでは、クライエントのストーリー、いわゆるドミナントストーリーを書き換えていくことを行っていきます。社会構成主義という言葉も併せて覚えておくと良いでしょう。

上記ナラティブアプローチと同様、心理学(公認心理師試験)と絡めて覚えると理解しやすいのが、行動変容アプローチです。
行動変容アプローチは、名前からもわかるように、学習理論、条件付け理論、そして認知行動療法といった心理学の技法を活用してクライエントに介入、行動を変容させていくアプローチです。

2 行動変容アプローチは,クライエントが,置かれている否定的な抑圧状況を認識し,自らの能力に気付き,その能力を高め,問題に対処することを目指す。

この説明内容は、エンパワメントアプローチです。エンパワーメントとは、em(~する)power(力)ment(名詞化接尾語)となり、つまり、クライエントの力を高めることによって、問題を解決していく、というようなアプローチです。
エンパワーメントというい言葉(概念)は、あらゆる場面で出てきます。ストレングスモデルとの関係性も含めて、しっかりと理解することは試験対策という意味でも重要ですね。実際よく出題されています。理由は、重要かつ問題を作りやすいからでしょうね

3 エンパワメントアプローチは,行動を学習の結果として捉え,正しく学習することにより問題行動を消去することを目指す。

これは、選択肢中に”行動”と入っていることからもわかると思いますし、先ほどの説明の通り、行動変容アプローチの説明です。

1 解決志向アプローチは,クライエントが抱く解決のイメージを尊重し,その実現に向けてクライエントの社会的機能を高めることを目指す。

今回の正答は、選択肢1です。教科書での扱いは、フェミニストアプローチ同様あまり大きくありませんが、問題解決アプローチと名前が似ていることもあって、間違えやすいと思います。(むしろ、だからこそ出題されていると思われます)。

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