2018年度(第31回)社会福祉士国家試験過去問解説 第102問 ホリス 心理社会的アプローチ

問題102 ホリス(Hollis, F.)が示した心理社会的アプローチの介入技法に関する次の記述のうち,正しいものを1 つ選びなさい。


1 「福祉事務所の相談窓口に行って話を聞くといいですよ」とアドバイスするのは,発達的な反省である。
2 「親に心配を掛けまいとして,泣きたいのをずっとこらえていたのですね」という言葉掛けは,直接的指示である。
3 「うんうん,なるほど。そうだったのですね」とうなずきながら話を聞くのは,持続的支持である。
4 「教室に入ろうとすると,友だちの視線が気になってつらくなり入れなくなるのですね」という言葉掛けは,浄化法である。
5 「子どもにきつく当たってしまうということですが,あなたが子どもの頃のお母さんとの関係はどうでしたか」と聞くのは,パターン力動的反省である。

引用元: 第31回(平成30年度)社会福祉士国家試験 試験問題

心理社会的アプローチ

ホリス、心理社会的アプローチについて。ホリスというと、まず想起するのが「状況の中の人」という言葉ですね。中央法規教科書第3版30pでは、全体関連的な状況の中にある人(the person in his situation configuration)という記載がありますが、こちらの方がより理解しやすいのでは無いでしょうか。つまり、当事者たるクライエントと、状況(環境)単体では無く、その相互作用の結果である” 全体関連的な状況の中にある人 ”こそを支援していく必要が有りますよ、ということですね。

さて、公認心理師との関連では、

 5 「子どもにきつく当たってしまうということですが,あなたが子どもの頃のお母さんとの関係はどうでしたか」と聞くのは,パターン力動的反省である。 

“力動”なんていうワードが出てきたところで、ピンと来る方も多いかと思いますが、精神分析の影響を受けています。精神分析の影響を受けた 診断主義が、ホリスのよって心理社会的アプローチに引き継がれたという流れですね。

教科書の方でも、さすがに大きくページを割いて記載されています。この問題を解くだけのためでなく、概要はしっかり抑えておいた方が良いと思います。

1.持続的支持:ワーカーによる形容、受容、はげまし、共感的理解など
2.直接的支持:ワーカーによる意見や態度の表明など
3.浄化法:クライエントの抱えている状況について探索し、事実を描写し、感情の解放を行う
4.人と状況の全体関連性についての反省的話し合い:取り巻く環境や他者との関係に関する思考・感情・気づき
5.パターン力動的要因への反省的話し合い :自らの行動傾向、出来事に対する反応や行動を生み出す思考や感情のパターンを明確化する
6.発達的要因への反省的話し合い:原家族や幼少期の経験について考慮する

引用元: 新・社会福祉士養成講座〈8〉 相談援助の理論と方法II 第3版  p152
 1 「福祉事務所の相談窓口に行って話を聞くといいですよ」とアドバイスするのは,発達的な反省である。 →直接的指示
 2 「親に心配を掛けまいとして,泣きたいのをずっとこらえていたのですね」という言葉掛けは,直接的指示である。→ パターン力動的要因への反省的話し合い 
 3 「うんうん,なるほど。そうだったのですね」とうなずきながら話を聞くのは,持続的支持である。→持続的指示
 4 「教室に入ろうとすると,友だちの視線が気になってつらくなり入れなくなるのですね」という言葉掛けは,浄化法である。→  人と状況の全体関連性についての反省的話し合い  
 5 「子どもにきつく当たってしまうということですが,あなたが子どもの頃のお母さんとの関係はどうでしたか」と聞くのは,パターン力動的反省である。 →  発達的要因への反省的話し合い  

正答は3となりますが、持続的指示の項に出てくる「共感的理解」というのも併せて覚えておきたいところですね。カールロジャースのクライエント中心療法の技法、共感的理解、自己一致、無条件の肯定的関心です。このあたりは公認心理師と微妙にかぶっていて、アプローチの仕方が違う感じですね。

社会福祉士と公認心理師試験は、同じ人物を違う角度で取り上げるような側面がありますので、お互いの受験者が、参考書を交換するように読んでみると、意外な面白さ、発見があるかも知れませんね。

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