2018年度(第31回)社会福祉士国家試験過去問解説 第99問 エコロジカルアプローチ
問題99 事例を読んで,外国籍住民を支援する団体のKソーシャルワーカー(社会福祉士)が,エコロジカルアプローチの視点から今後行う取組として,より適切なものを2つ選びなさい。
〔事 例〕
P国籍のLさん(30 歳,女性)は半年前に来日した。Mさんなど一部の日本人住民に挨拶をしても無視されることが度々あり,Lさんは疎外感を覚えている。LさんはMさんなど近隣の日本人住民と交流しながら住み続けたいと考えているが,Lさん自身はMさんらに何も伝えることができない。このためLさんは,Kソーシャルワーカーに相談した。
1 Lさんの了解を得て,Lさんに対する思いについてMさんらに尋ねる。
2 この地区の民生委員に問題解決・再発防止の仕組み作りを任せる。
3 日本人住民との良好な関係作りのためにLさんができることを,一緒に考える。
4 疎外感緩和のため,在日P国人団体の集まりに参加するように助言する。
5 Lさんに,Mさんらに対する言動を思い返してもらい,もし不適切な言動をしたことがあればやめるように助言する。
引用元: 第31回(平成30年度)社会福祉士国家試験 試験問題
エコロジカルアプローチについての事例問題
エコロジカルアプローチについてです。 今回の事例では、”人と環境の関係に問題があり、そのことが社会生活上でのニーズを引き起こしている”と言えます。 (出所:中央法規 新・社会福祉士養成講座 7巻 7p)
ということで、環境調整に焦点化していくようなアプローチがエコロジカルアプローチです。この問題では適切なものを2つ選ぶ必要が有る点に留意していきましょう。
エコロジカルアプローチの視点で考えることが求められる
4 疎外感緩和のため,在日P国人団体の集まりに参加するように助言する。
この選択肢を、ついつい選んでしまいませんでしたか。私はうっかり選んでしまいましたが、これは誤りです。何故でしょうか。別に間違った対応では無いように思いますが、問題文をよく読みましょう。” エコロジカルアプローチの視点から今後行う取組 ”についての解答を求められています。同郷の方同士で交流することは、Lさんにとっては良いことかも知れませんが、これでは”近隣の住民と交流しながら住み続けたい”という思いには応えられていません。近隣住民との関係を改善していくために、環境を調整する、というような内容での解答が必要です。
2 この地区の民生委員に問題解決・再発防止の仕組み作りを任せる。
これは常識的に選ばない選択肢では無いでしょうか。他の事例問題同様、民生委員と一緒に考える、といった内容であれば良いですが、任せてしまっては、ソーシャルワーカーの職場放棄のようなものですよね。したがって、これは誤りです。
3 日本人住民との良好な関係作りのためにLさんができることを,一緒に考える。
例えば、このように。”一緒に考える”は正答となりやすいワードですよね。この問題でも同様です。
1 Lさんの了解を得て,Lさんに対する思いについてMさんらに尋ねる。
あくまで、クライエントの同意を得た上で、地域住民(Mさん)らとの調整を図るという内容も、この問題の解答にふさわしい無いようかと思います。気をつけないと、こじれてしまいそうなので、力量がためされる所かとは思います。
5 Lさんに,Mさんらに対する言動を思い返してもらい,もし不適切な言動をしたことがあればやめるように助言する。
これも、まあ無くはないと思いますが、環境調整とは言えないように思われますね。語感で除外できそうな感じの選択肢かな・・・。
事例問題ですが、少し引っかかりそうな問題
問題文をよく読み、真に問われている内容が何か、求めれている解答を読み取る事が必要な問題でした。