2018年度(第31回)社会福祉士国家試験解説 第28問 性的指向・性自認
問題 28
日本における性同一性障害や性的指向・性自認に関する次の記述のうち,正しいものを 1 つ選びなさい。
1 法務省の「性的指向及び性自認を理由とする偏見や差別をなくしましょう」という啓発活動では,LGBTという表現は使われていない。
2 文部科学省の「いじめの防止等のための基本的な方針」(2017 年(平成 29 年)改定)には,性的指向・性自認に係る児童生徒への対応が盛り込まれている。
3 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律により,本人の自己申告で性別の取扱いの変更が認められるようになった。
4 性的指向・性自認への理解を求める取組は,地域共生社会の実現という政策課題には当てはまらない。
5 同性婚のための手続が民法に規定されている。
(注) LGBTとは,(Lesbian,Gay,Bisexual,Transgender)の頭字語である。
引用元: 第31回(平成30年度)社会福祉士国家試験 試験問題
またもやタイムリーな問題。教科書一辺倒の学習ではいけないというメッセージか。
LGBTについての問題ですね。注釈にもあるとおり、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字をとってLGBTです。つい3日前、台湾で同性婚が合法化される法案が可決されました。来年の国試でも狙われる可能性は有りますね。いずれにせよ、ダイバーシティという言葉は、今とても注目されていますので、絶対に覚えておくべき概念です。
今年の試験の狙い目として、アカウンタビリティ、アクセシビリティ、コンプライアンス、ガバナンス、サスティナビリティ、ディーセント・ワークあたりは日経などではもう普通に使われていますから、覚えておいた方が良いと思います。働き方改革関連法案も、第32回では出てくるとにらんでます。
社会福祉士は、生涯学習・現代日本の課題について感度が高くなくてはならない、というメッセージが今回の国試には込められているように思います。
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律
さて、まず性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の中身を見ていきましょう。
第三条 家庭裁判所は、性同一性障害者であって次の各号のいずれにも該当するものについて、その者の請求により、性別の取扱いの変更の審判をすることができる。
出所: 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律
一 二十歳以上であること。
二 現に婚姻をしていないこと。
三 現に未成年の子がいないこと。
四 生殖腺せんがないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
五 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。
2 前項の請求をするには、同項の性同一性障害者に係る前条の診断の結果並びに治療の経過及び結果その他の厚生労働省令で定める事項が記載された医師の診断書を提出しなければならない。
性別の変更には 、1. 家庭裁判所の審判が必要。2.本人による請求が必要 3.5つの条件が必要(医師の診断が必要) 以上を満たす必要が有ります。したがって、選択肢3 ”自己申告で性別の取扱いの変更”では不十分で有り、誤りです。
日本で同性婚は法律では認められていない。パートナーシップ宣誓制度と混同しないように
渋谷区をはじめ、パートナーシップ宣誓制度を行っている自治体が多数有ります。ニュースなどでご覧になった方もいらっしゃるのでは無いでしょうか。しかしながら、パートナーシップ=婚姻ではないのです。あくまで婚姻相当とする条例であるため、混同しないように注意してください。
第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
出所:日本国憲法
憲法二十四条では、婚姻は”両性の合意のみに基づいて成立”すると定めています。これが現在同性婚を認めない根拠となっています。選択肢5 民法においても、同性婚を認める規定は存在しません。誤りです。
いつものように、否定するだけの選択肢は誤りが”多い”
1 法務省の「性的指向及び性自認を理由とする偏見や差別をなくしましょう」という啓発活動では,LGBTという表現は使われていない。→これは正直言って迷いました。最後まで残しておく選択肢でも良いかも知れませんね。リンク先を見れば、誤りで有ることは一目瞭然ですが。受験テクニック的に誤りぽいな、ぐらいは読めるところかな。
4 性的指向・性自認への理解を求める取組は,地域共生社会の実現という政策課題には当てはまらない。 →これは常識的に考えたらおかしいですね。地域共生というぐらいですから、やはりダイバーシティとの関連づけで、誤りであることは見抜けるのでは無いでしょうか。
”それらしい”選択肢を選ぶことができれば、正答率は上がる
2 文部科学省の「いじめの防止等のための基本的な方針」(2017 年(平成 29 年)改定)には,性的指向・性自認に係る児童生徒への対応が盛り込まれている。 →中身を見てみました。書いてありましたよ・・・3行ほど。
○性同一性障害や性的指向・性自認に係る児童生徒に対するいじめを防止 するため,性同一性障害や性的指向・性自認について,教職員への正しい理解の促進や,学校として必要な対応について周知する。
引用: 「いじめの防止等のための基本的な方針」(2017 年(平成 29 年)改定)
正直、これを全部チェックしておくのは不可能かと思います。が、国試で出てきたとき、いかに勘を働かせて正答を選ぶか、センス・嗅覚が合格を分けると言っても過言ではありません。そのためには、5択のうち明らかに間違っている選択肢を潰せるか?で勝率が大きく変わってきます。また、常日頃からニュースには敏感になることが必要です。今後も、時事問題の出題は増えることはあっても、減ることは無いのでは無いかと思います。