2018年度(第31回)社会福祉士国家試験解説 第26問 ヘイトスピーチ解消法

問題26

 「ヘイトスピーチ解消法」の内容に関する次の記述のうち,最も適切なものを1 つ選びなさい。


1 外国人観光客に対する不当な差別的言動を規制することを目的としている。
2 不当な差別的言動に対する罰則が規定されている。
3 雇用における差別的処遇の改善義務が規定されている。
4 地方公共団体には,不当な差別的言動の解消に向けた取組を行う努力が求められている。
5 基本的人権としての表現の自由に対する制限が規定されている。


(注) 「ヘイトスピーチ解消法」とは,「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」のことである。



引用元: 第31回(平成30年度)社会福祉士国家試験 試験問題

教科書・過去問対策では解けない、常識・人権感覚・情勢認識が問われている

この問題も、教科書・参考書の丸暗記・詰め込みではなく、如何に日々人権意識を持ちながら時事問題に触れているかを問われている問題だと思います。実際、相談員に求められているのは、ルーチンワークではなく、今後激変していく社会に対応していくことが求められています。外国人労働者も増え、ダイバーシティの時代になっていくからこそ、このような問題には受験生の段階から問題意識を持つことが必要だと思います。

そもそもヘイトスピーチとは何か

“ヘイトスピーチ”という言葉の意味がわからなければ、この問題を解くことは困難ですよね。新聞などでは直訳して、”憎悪表現”などと書かれていることもありますが、例としてあげると、特定の国籍をもつ者に対して差別的な表現(この国から出て行け、より暴力的な表現など)を行うことなどが挙げられます。近年、ニュースで取り上げられたり、訴訟が提起されており、そのような報道に触れたことのある方は理解しやすいのでは無いでしょうか。

日本には、人権上の懸念が複数指摘されている

日本には、人権に関して複数の懸念が指摘されています。国連の人権委員会からは、外国人差別や、性的少数者・LGBTについて等、ハーグ条約の問題など・・・。障害者権利条約批准から、障害者差別解消法の流れ、子どもに対する体罰が、学校では禁止されていても家庭でのしつけにおいて是認されていることについての勧告など・・・日本は人権後進国であるとの報道も目にします。

社会福祉士には、高い倫理観と人権感覚が求められている

社会福祉士、相談員が接するクライエントは、要支援者と言われるように、支援が必要な人であり、ほぼ社会的弱者です。そういった方々の支援に携わるわけですから、人権感覚が無くては資質が無いと言っても過言では無いでしょう。まさにそういった事を問われている問題だと思います。

設問は、限定的な選択肢を除外していくことで解きやすくなる問題

1 外国人観光客に対する不当な差別的言動を規制することを目的としている。 →観光客だけに限定して良いのでしょうか?
3 雇用における差別的処遇の改善義務が規定されている。 →”処遇”については労働関連法で対応すべき問題。また、”スピーチ”には関連しないですよね。

選択肢1,3はこれで除外できるかとおもいます。

法案の中身・問題点を理解しているかがポイント

2 不当な差別的言動に対する罰則が規定されている。  →これは知らないと難しいかも知れないですね。ですが、ヘイトスピーチ解消法には、罰則が無く、実効性に疑問符がある、と言うことは度々報道されています。したがって、このような問題がある法案であることは、知っていて欲しい、という出題者の意図があるのかな、と私は感じました。

5 基本的人権としての表現の自由に対する制限が規定されている。 →これは冷静に考えればわかりそうでもありますが、”ヘイトスピーチと表現の自由”についての議論、というのも 話題になりますね。表現の自由と人権侵害のいずれが優先するか。これはある意味答えが無い問題と言えましょう。どちらにも言い分は有るわけです。ヘイトスピーチを容認する者(主にヘイトスピーチを行う者)の建前が、表現の自由です。私は人権障害は許されないと考えており、ヘイトスピーチは規制すべきと思います。このように、デリケートな問題というか、答えが無い問題は、法に規定するのは難しいですね。それこそ表現の自由を制限する端緒となりかねないからです。そのような点から、知識として知っていなくとも、誤りで有ることは導き出せるのでは無いかと思います。

4 地方公共団体には,不当な差別的言動の解消に向けた取組を行う努力が求められている。 →消去法で、これが正答。”努力”義務なのか?、と言う点は自信が無いところではありましたが、一番”それっぽい”選択肢でもあります。

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