2018年度(第31回)社会福祉士国家試験解説 第45問 福祉計画
問題45
福祉計画の策定に際して,相互の計画を一体のものとして作成することが法律で規定されているものを1 つ選びなさい。
1 市町村地域福祉計画と市町村老人福祉計画
2 市町村障害福祉計画と市町村障害者計画
3 市町村老人福祉計画と市町村介護保険事業計画
4 市町村子ども・子育て支援事業計画と「教育振興基本計画」
5 都道府県介護保険事業支援計画と都道府県地域福祉支援計画(注) 「教育振興基本計画」とは,教育基本法第17 条第2 項の規定により市町村が定める「教育の振興のための施策に関する基本的な計画」のことである。
引用元: 第31回(平成30年度)社会福祉士国家試験 試験問題
福祉計画、難しいですね!
正直言って、福祉計画は苦手ですね。この問題見たときは、またかーという感じでした。いつも出題されてますよね・・・。ポジティブに考えれば、いつも出ている=対策しておけば得点源にできる。ということで、頑張って取り組みます。
策定が必須のものと、そうでないものを整理すると良いかも。
選択肢1 市町村地域福祉計画と市町村老人福祉計画
(市町村地域福祉計画)
出所:社会福祉法
第百七条 市町村は、地域福祉の推進に関する事項として次に掲げる事項を一体的に定める計画(以下「市町村地域福祉計画」という。)を策定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ、住民、社会福祉を目的とする事業を経営する者その他社会福祉に関する活動を行う者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めるとともに、その内容を公表するよう努めるものとする。
まず、市町村地域福祉計画は、社会福祉法をみてみます。”策定し、又は変更するときは”ということで、策定しないときもあるわけです。したがって、策定は市町村次第ということですね。厚労省の資料によると、策定率は約75%で、町村部は策定率が低いようです。計画の策定にあたっては、当然にマンパワーが必要ですから、規模の小さい町村部では、義務化されていないものに割くリソースが有ったら他にまわしたい、と言うところでしょうか?
(市町村老人福祉計画)
出所:老人福祉法
第二十条の八 市町村は、老人居宅生活支援事業及び老人福祉施設による事業(以下「老人福祉事業」という。)の供給体制の確保に関する計画(以下「市町村老人福祉計画」という。)を定めるものとする。
市町村老人福祉計画は、老人福祉法に規定されていました。” 定めるものとする。 ”なので、これは必ず策定しないといけないですね!すなわち、まさに問題文の”法律に規定された”ものであると言えます。なお、期間については定めが無いようです。
ということで、地域福祉計画は必須ではない、老人福祉計画は必須。よって、” 相互の計画を一体のものとして作成することが法律で規定されている ”とは言えないです。誤り。
選択肢2 市町村障害福祉計画と市町村障害者計画
第八十八条 市町村は、基本指針に即して、障害福祉サービスの提供体制の確保その他この法律に基づく業務の円滑な実施に関する計画(以下「市町村障害福祉計画」という。)を定めるものとする。
出所: 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律
2 市町村障害福祉計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 障害福祉サービス、相談支援及び地域生活支援事業の提供体制の確保に係る目標に関する事項
二 各年度における指定障害福祉サービス、指定地域相談支援又は指定計画相談支援の種類ごとの必要な量の見込み
三 地域生活支援事業の種類ごとの実施に関する事項
3 市町村障害福祉計画においては、前項各号に掲げるもののほか、次に掲げる事項について定めるよう努めるものとする。
一 前項第二号の指定障害福祉サービス、指定地域相談支援又は指定計画相談支援の種類ごとの必要な見込量の確保のための方策
二 前項第二号の指定障害福祉サービス、指定地域相談支援又は指定計画相談支援及び同項第三号の地域生活支援事業の提供体制の確保に係る医療機関、教育機関、公共職業安定所その他の職業リハビリテーションの措置を実施する機関その他の関係機関との連携に関する事項
4 市町村障害福祉計画は、当該市町村の区域における障害者等の数及びその障害の状況を勘案して作成されなければならない。
5 市町村は、当該市町村の区域における障害者等の心身の状況、その置かれている環境その他の事情を正確に把握した上で、これらの事情を勘案して、市町村障害福祉計画を作成するよう努めるものとする。
6 市町村障害福祉計画は、児童福祉法第三十三条の二十第一項に規定する市町村障害児福祉計画と一体のものとして作成することができる。
7 市町村障害福祉計画は、障害者基本法第十一条第三項に規定する市町村障害者計画、社会福祉法第百七条第一項に規定する市町村地域福祉計画その他の法律の規定による計画であって障害者等の福祉に関する事項を定めるものと調和が保たれたものでなければならない。
市町村障害福祉計画は”定めるものとする”なので、作成は義務です。盛り込まないと行けない具体的内容が書かれていますが、注意したいところは、” 市町村障害児福祉計画と一体のものとして作成することができる。 ” → できるなので、一体のものとしてもしなくてもどちらでも良いです。ここも引っかけてきそうな所ですね。
また、” 7 市町村障害福祉計画は、障害者基本法第十一条第三項に規定する市町村障害者計画、社会福祉法第百七条第一項に規定する市町村地域福祉計画その他の法律の規定による計画であって障害者等の福祉に関する事項を定めるものと調和が保たれたものでなければならない。 ” →あくまでも、調和が必要であって、一体である必要は有りません。したがって選択肢2は誤り。ややこしくて頭にきますね!大丈夫、みんなわからないところなので、ここをしっかり抑えられたら合格がそれだけ近くなります。
なお、障害者福祉計画の計画期間は3年としている自治体が多いですが、期間の定めは法に規定されていないことも留意ください。
選択肢3 市町村老人福祉計画と市町村介護保険事業計画
(市町村老人福祉計画)
出所:老人福祉法
第二十条の八 市町村は、老人居宅生活支援事業及び老人福祉施設による事業(以下「老人福祉事業」という。)の供給体制の確保に関する計画(以下「市町村老人福祉計画」という。)を定めるものとする。
2 市町村老人福祉計画においては、当該市町村の区域において確保すべき老人福祉事業の量の目標を定めるものとする。
3 市町村老人福祉計画においては、前項の目標のほか、同項の老人福祉事業の量の確保のための方策について定めるよう努めるものとする。
4 市町村は、第二項の目標(老人居宅生活支援事業、老人デイサービスセンター、老人短期入所施設及び特別養護老人ホームに係るものに限る。)を定めるに当たつては、介護保険法第百十七条第二項第一号に規定する介護給付等対象サービスの種類ごとの量の見込み(同法に規定する訪問介護、通所介護、短期入所生活介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、地域密着型通所介護、認知症対応型共同生活介護、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、複合型サービス及び介護福祉施設サービス並びに介護予防短期入所生活介護、介護予防認知症対応型通所介護、介護予防小規模多機能型居宅介護及び介護予防認知症対応型共同生活介護に係るものに限る。)並びに第一号訪問事業及び第一号通所事業の量の見込みを勘案しなければならない。
5 厚生労働大臣は、市町村が第二項の目標(養護老人ホーム、軽費老人ホーム、老人福祉センター及び老人介護支援センターに係るものに限る。)を定めるに当たつて参酌すべき標準を定めるものとする。
6 市町村は、当該市町村の区域における身体上又は精神上の障害があるために日常生活を営むのに支障がある老人の人数、その障害の状況、その養護の実態その他の事情を勘案して、市町村老人福祉計画を作成するよう努めるものとする。
7 市町村老人福祉計画は、介護保険法第百十七条第一項に規定する市町村介護保険事業計画と一体のものとして作成されなければならない。
ここは、そのものズバリが書いてありますね。”7 市町村老人福祉計画は、介護保険法第百十七条第一項に規定する市町村介護保険事業計画と一体のものとして作成されなければならない。” ということで、正答です。
(市町村介護保険事業計画)
出所:介護保険法
第百十七条 市町村は、基本指針に即して、三年を一期とする当該市町村が行う介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施に関する計画(以下「市町村介護保険事業計画」という。)を定めるものとする。
2 市町村介護保険事業計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 当該市町村が、その住民が日常生活を営んでいる地域として、地理的条件、人口、交通事情その他の社会的条件、介護給付等対象サービスを提供するための施設の整備の状況その他の条件を総合的に勘案して定める区域ごとの当該区域における各年度の認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護及び地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護に係る必要利用定員総数その他の介護給付等対象サービスの種類ごとの量の見込み
二 各年度における地域支援事業の量の見込み
三 被保険者の地域における自立した日常生活の支援、要介護状態等となることの予防又は要介護状態等の軽減若しくは悪化の防止及び介護給付等に要する費用の適正化に関し、市町村が取り組むべき施策に関する事項
四 前号に掲げる事項の目標に関する事項
なお、介護保険法に規定される”市町村介護保険事業計画”について。 ” 三年を一期とする当該市町村が行う介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施に関する計画(以下「市町村介護保険事業計画」という。)を定めるものとする。” →ここは重要ですね。三年を一気とする、と規定されています。法に明記されています。一体として作成される市町村老人福祉計画も、必然的に三年となりますが、法に規定されているのは市町村介護保険事業計画です。引っかけ問題が作りやすいところですね!なお、先にも触れたとおり、市町村障害福祉計画は、結果として三年一期となっているところが多いですが、法に規定されていないのでここも要注意です。
市町村子ども・子育て支援事業計画と「教育振興基本計画」
(市町村子ども・子育て支援事業計画)
出所: 子ども・子育て支援法
第六十一条 市町村は、基本指針に即して、五年を一期とする教育・保育及び地域子ども・子育て支援事業の提供体制の確保その他この法律に基づく業務の円滑な実施に関する計画(以下「市町村子ども・子育て支援事業計画」という。)を定めるものとする。
2 市町村子ども・子育て支援事業計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 市町村が、地理的条件、人口、交通事情その他の社会的条件、教育・保育を提供するための施設の整備の状況その他の条件を総合的に勘案して定める区域(以下「教育・保育提供区域」という。)ごとの当該教育・保育提供区域における各年度の特定教育・保育施設に係る必要利用定員総数(第十九条第一項各号に掲げる小学校就学前子どもの区分ごとの必要利用定員総数とする。)、特定地域型保育事業所(事業所内保育事業所における労働者等の監護する小学校就学前子どもに係る部分を除く。)に係る必要利用定員総数(同項第三号に掲げる小学校就学前子どもに係るものに限る。)その他の教育・保育の量の見込み並びに実施しようとする教育・保育の提供体制の確保の内容及びその実施時期
二 教育・保育提供区域ごとの当該教育・保育提供区域における各年度の地域子ども・子育て支援事業の量の見込み並びに実施しようとする地域子ども・子育て支援事業の提供体制の確保の内容及びその実施時期
三 子ども・子育て支援給付に係る教育・保育の一体的提供及び当該教育・保育の推進に関する体制の確保の内容
3 市町村子ども・子育て支援事業計画においては、前項各号に規定するもののほか、次に掲げる事項について定めるよう努めるものとする。
一 産後の休業及び育児休業後における特定教育・保育施設等の円滑な利用の確保に関する事項
二 保護を要する子どもの養育環境の整備、児童福祉法第四条第二項に規定する障害児に対して行われる保護並びに日常生活上の指導及び知識技能の付与その他の子どもに関する専門的な知識及び技術を要する支援に関する都道府県が行う施策との連携に関する事項
三 労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために必要な雇用環境の整備に関する施策との連携に関する事項
4 市町村子ども・子育て支援事業計画は、教育・保育提供区域における子どもの数、子どもの保護者の特定教育・保育施設等及び地域子ども・子育て支援事業の利用に関する意向その他の事情を勘案して作成されなければならない。
5 市町村は、教育・保育提供区域における子ども及びその保護者の置かれている環境その他の事情を正確に把握した上で、これらの事情を勘案して、市町村子ども・子育て支援事業計画を作成するよう努めるものとする。
6 市町村子ども・子育て支援事業計画は、社会福祉法第百七条第一項に規定する市町村地域福祉計画、教育基本法第十七条第二項の規定により市町村が定める教育の振興のための施策に関する基本的な計画(次条第四項において「教育振興基本計画」という。)その他の法律の規定による計画であって子どもの福祉又は教育に関する事項を定めるものと調和が保たれたものでなければならない。
市町村子ども・子育て支援事業計画のポイントですが、”五年を一期として”、”定めるものとする”=義務、そして” 「教育振興基本計画」 と調和が保たれたもの ”です。一体的に作成する必要は無いので、この問題的には誤り。そして、今挙げた項目は引っかけで問われやすいところですね。
都道府県介護保険事業支援計画と都道府県地域福祉支援計画
(都道府県介護保険事業支援計画)
第百十八条 都道府県は、基本指針に即して、三年を一期とする介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施の支援に関する計画(以下「都道府県介護保険事業支援計画」という。)を定めるものとする。(略)
出所:介護保険法
6 都道府県介護保険事業支援計画は、老人福祉法第二十条の九第一項に規定する都道府県老人福祉計画と一体のものとして作成されなければならない。
(略)
10 都道府県介護保険事業支援計画は、社会福祉法第百八条第一項に規定する都道府県地域福祉支援計画、高齢者の居住の安定確保に関する法律第四条第一項に規定する都道府県高齢者居住安定確保計画その他の法律の規定による計画であって要介護者等の保健、医療、福祉又は居住に関する事項を定めるものと調和が保たれたものでなければならない。
最後に、都道府県介護保険事業支援計画ですが、これが最高に紛らわしいですね!”市町村介護保険事業計画”というものがありますから、ついつい都道府県介護保険事業計画と覚えがちですが、”支援”が入ります。三年が一期で、作成義務があるということも一緒です。気をつけたいのは、都道府県老人福祉計画と一体として作成する、これは良いのですが、 都道府県地域福祉支援計画 とは”調和が保たれたもの”です。すごく間違えやすいので、これはある意味引っかかっても仕方ないかな、と言う気がしますね。でも、ここの違いがしっかり抑えられたら、鬼に金棒な気がします。
とにかくややこしい問題なので、要注意
この福祉計画の厄介なところは、1.ややこしい 2.根拠となる法律が多岐にわたり、調べるのが大変 3.法律の条文理解がしにくい等々、受験生をイヤにさせる要素が目白押しです。実務上は、丸暗記しなくても、都度調べれば良い内容とも思います。しかしながら、苦手としている受験生が多いのは事実(たぶん)。なので、しっかり理解して差を付けるチャンスとも言えます。
この記事はものすごく書くのに時間かかりました・・・(調べたり、理解するのが)。皆さんの理解の一助になれば幸いです。