2018年度(第31回)社会福祉士国家試験過去問解説 第135問 高齢者虐待防止法

問題135 事例を読んで,R市の地域包括支援センターのC社会福祉士の対応に関する次の記述のうち,現時点で最も適切なものを1つ選びなさい。


〔事 例〕
Dさん(70 歳,男性)は,脳梗塞の後遺症で右半身に麻痺があり,軽度の認知症がある。要介護2 の認定を受けており,週2 回デイサービスを利用している。この地区のE民生委員からC社会福祉士に電話があり,「隣家の人から,頻繁に同居の息子Fさん(43 歳)の大声がしてDさんのことが心配だという連絡があった。Fさんは無職で日中は家に居るが,自分は家に入れてもらえないので状況を確認してほしい」とのことであった。
1 家に他人を入れたくないようなので,警察官に同行してもらう。
2 隣家の人から様子を心配する電話があり訪問したことを告げて,現在の状況を調査する。
3 隣家の人に事情を話し,変化があったら報告するように頼む。
4 虐待に迅速に対応できるよう,Dさんの保護に必要な居室を確保する。
5 R市の虐待防止担当者に通報し,Dさんの担当の介護支援専門員,デイサービススタッフ,E民生委員などと対応を協議する。

引用元: 第31回(平成30年度)社会福祉士国家試験 試験問題

高齢者の虐待対応

地域包括における虐待の対応について。包括は虐待の窓口を行っています。
高齢者虐待防止法(高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律)に規定されている、虐待の通報義務を理解しておきましょう。
また、あわせて児童虐待、障がい者虐待、DVの通報義務もセットで覚えると効率的です。
(というより、これら4種の虐待の通報義務は少しずつ違うので、間違えやすく、出題しやすいポイントです)

事例問題の鉄則

事例問題ということで、いつものように気を付けるだけで攻略がしやすくなるポイントがあります。この問題にも当てはまっています。それは、
拙速な介入はNG、ということです。

1 家に他人を入れたくないようなので,警察官に同行してもらう。

例えばこちら。この選択肢には様々な問題点があります。
一方でこれは、典型的な素人考えですよね。”警察に頼むべきじゃないのか”というような。
いきなり警察官に同行してもらうのはこの段階では拙速すぎると思われます。

2 隣家の人から様子を心配する電話があり訪問したことを告げて,現在の状況を調査する。

こちらも、試験という点では選ぶ人は居ないと思うのですが、現実ではうっかりやってしまいそうな感じではあります。
情報の出所(隣の人)を明かしてしまったら、双方から袋だたきにされるケースじゃないでしょうか?
通報者の秘密は当然に守られるべきでしょう。

3 隣家の人に事情を話し,変化があったら報告するように頼む。

ここで出てくる”事情”とは何のことでしょうか??
そもそも、隣家の人からの連絡に基づいて動いているはずでは無かったかと。

4 虐待に迅速に対応できるよう,Dさんの保護に必要な居室を確保する。

虐待対策で居室を確保・・・・つまり特養等に入所の手配すると言うことですが、今すぐ分離しないと行けないような自体かどうかの確認もまだされていないのに、この対応は拙速と言えるでしょう。

5 R市の虐待防止担当者に通報し,Dさんの担当の介護支援専門員,デイサービススタッフ,E民生委員などと対応を協議する。

今回はこの選択肢が正答です。
虐待防止法では、 生命又は身体に重大な危険が生じている場合は通報義務、それ以外は努力義務とされています。
(ただし、施設職員による虐待を施設職員が発見した場合は上記にかかわらず通報義務)
今回の事例では、生命・身体に重大な危険が生じているかどうかは不明ですが、努力義務に基づいて通報をまずは行い、協議をしていくというのがこの時点での最善だろう、ということになります。

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