2018年度(第31回)社会福祉士国家試験過去問解説 第127問 障がい者の介護保険移行

問題127 事例を読んで,在宅サービスを利用して一人暮らしをしているAさんのケアプランに関する次の記述のうち,適切なものを2 つ選びなさい。


〔事 例〕
弱視であるAさん(64 歳,男性)は20 年前に事故で頸椎損傷を受傷し,四肢麻痺の状態になった。現在,障害支援区分6 で居宅介護と同行援護を利用し,障害基礎年金を受けて生活している。間もなく65 歳となり介護保険を利用することになると訪問介護の時間数が減少してしまうため,地域包括支援センターに行った。そこで,B介護支援専門員(社会福祉士)に今後も同等のサービスを利用できるかを相談した。


1 介護保険法の訪問介護の時間数の不足分は,「障害者総合支援法」で補完することを考える。
2 「障害者総合支援法」のサービスのまま,ケアプランを作成する。
3 介護保険法のサービス内でケアプランを作成する。
4 同行援護は,「障害者総合支援法」で引き続き対応する。
5 介護保険の上限でサービスを組み,他は全額自己負担で対応する。


(注) 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。

引用元: 第31回(平成30年度)社会福祉士国家試験 試験問題

障がい者の、いわゆる65歳の壁について

障がい者が65歳になった時何が起こるか。障害分野で働いている人でないとなかなかイメージできないかも知れません。
実際、私は高齢者分野でずっと働いてきて、障害分野に関わるようになるまでほとんど問題意識がありませんでした。
ケアマネ試験でも、ケアマネ研修でも、ほとんど触れられません。しかしながら、当事者にとっては深刻な問題です。

基本的な考え方は、介護保険が優先となるため、介護保険に類似するサービスは介護保険サービスを使用し、サービスがないものは引き続き総合支援法のサービスを使用すると言うことになります。

具体的に言うと、居宅介護は介護保険の訪問介護(ヘルパー)に移行しますが、同行援護は移行先に存在しないため、そのまま総合支援法を使うと言うことになります。

1 介護保険法の訪問介護の時間数の不足分は,「障害者総合支援法」で補完することを考える。
4 同行援護は,「障害者総合支援法」で引き続き対応する。

以上の考え方から、この2つが正答となります。

2 「障害者総合支援法」のサービスのまま,ケアプランを作成する。
3 介護保険法のサービス内でケアプランを作成する。

冒頭でも書いたように、介護保険優先となるため、訪問介護のケアプランをケアマネが作成することになります。ケアマネは介護保険サービスの専門職であり、障害者総合支援法のプランは作りません(相談支援専門員の役割です)
また、問題文中にも” 今後も同等のサービスを利用できるかを相談した ”とありますので、介護保険に完全移行してしまうと、Aさんに対するサービス量は減少してしまうことになります。したがって、選択肢としては不適切と言えます。

5 介護保険の上限でサービスを組み,他は全額自己負担で対応する。

これは、ある意味間違いでは無く、こういった対応は可能です。しかしながら、障害基礎年金を受けて暮らしていると言うことで、最大でも月8万円くらいの収入です。全額自己負担と簡単に言いますけど、相当な金額になると思われます。また、この問題は”適切なものを2つ”選択するもんだいなので、” 1 介護保険法の訪問介護の時間数の不足分は,「障害者総合支援法」で補完することを考える。 ”よりも、こちらの方が適切、とは言いがたいと思われます。したがって、これも誤りです。

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