2018年度(第31回)社会福祉士国家試験過去問解説 第83問 児童虐待防止法 ※かなり公認心理師試験向け

問題83 児童福祉法と「児童虐待防止法」に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。


1 児童虐待の通告義務に違反すると刑罰の対象となる。
2 立入調査には裁判所の令状が必要である。
3 親権者の意に反し, 2 か月を超えて一時保護を行うには,家庭裁判所の承認が必要である。
4 本人と同居していない者が保護者に該当することはない。
5 児童虐待には,保護者がわいせつな行為をさせることは含まれない。
(注) 「児童虐待防止法」とは,「児童虐待の防止等に関する法律」のことである。


引用元: 第31回(平成30年度)社会福祉士国家試験 試験問題

児童虐待防止法についての問題、と認識することがポイント

児童虐待防止法について、ということで、公認心理師試験にも通ずる問題です。児童虐待はニュースでもよく取り上げられていますし、試験対策上も重要な項目なので、しっかり学習したいですね。

虐待についての問題は、作りやすい

出題者からすると、虐待に関しての問題はとても作りやすいと思います。理由は色々ありますが、高齢者・障害者・DV・児童それぞれの領域で少しずつ考え方や条件が違うため、ややこしいんですよね。そんなこともあって、問題が作りやすいと思います。ちなみに、公認心理師試験でも頻出ですね。

 1 児童虐待の通告義務に違反すると刑罰の対象となる。

児童虐待の通報義務については、児童福祉法と児童虐待防止法それぞれに規定があります。ここでは児童虐待防止法の条文を引用します。

(児童虐待に係る通告)
第六条 児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。

引用:児童虐待防止法

” 児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者 ”、には、通告しなければならない、とされています。つまり、児童虐待が疑われる段階で、全ての国民において通報義務があるとされています。これが、DVであれば身体的虐待があるときのみであったり、高齢者は施設職員には義務が課せられている(その他の者は努力義務)といったように、少しずつ違います。(公認心理師試験ではとても狙われる)

さて、この問題についてですが、児童虐待の通報義務について罰則はありません。したがって、選択肢1は誤りです。

児童相談所にはとても強い権限が与えられている

 2 立入調査には裁判所の令状が必要である。 

これは、私が間違えてしまった選択肢です。児童相談所にはとても強い権限があり、立入調査に当たって裁判所の令状は必要とされていません。

第三十三条 児童相談所長は、必要があると認めるときは、第二十六条第一項の措置を採るに至るまで、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童の一時保護を行い、又は適当な者に委託して、当該一時保護を行わせることができる。
○2 都道府県知事は、必要があると認めるときは、第二十七条第一項又は第二項の措置(第二十八条第四項の規定による勧告を受けて採る指導措置を除く。)を採るに至るまで、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童相談所長をして、児童の一時保護を行わせ、又は適当な者に当該一時保護を行うことを委託させることができる。
○3 前二項の規定による一時保護の期間は、当該一時保護を開始した日から二月を超えてはならない。
○4 前項の規定にかかわらず、児童相談所長又は都道府県知事は、必要があると認めるときは、引き続き第一項又は第二項の規定による一時保護を行うことができる。
○5 前項の規定により引き続き一時保護を行うことが当該児童の親権を行う者又は未成年後見人の意に反する場合においては、児童相談所長又は都道府県知事が引き続き一時保護を行おうとするとき、及び引き続き一時保護を行つた後二月を超えて引き続き一時保護を行おうとするときごとに、児童相談所長又は都道府県知事は、家庭裁判所の承認を得なければならない。ただし、当該児童に係る第二十八条第一項第一号若しくは第二号ただし書の承認の申立て又は当該児童の親権者に係る第三十三条の七の規定による親権喪失若しくは親権停止の審判の請求若しくは当該児童の未成年後見人に係る第三十三条の九の規定による未成年後見人の解任の請求がされている場合は、この限りでない。

引用:児童福祉法
3 親権者の意に反し, 2 か月を超えて一時保護を行うには,家庭裁判所の承認が必要である。

選択肢3正答。第3項に、しっかりと同じ事が書いてありますね。もっとも、消去法で導き出す方が良いと思います。続けて、他の選択肢を見ていきます。

ここでのポイントは、立入り調査と、臨検の違いです。どうも、 鍵や扉をぶち壊して家屋内に入ることというイメージを持ちますが、それは臨検です。立入り調査を保護者が拒否する等した場合、家裁・簡易裁判所の令状をとったうえで臨検という形になります。つまり選択肢2は誤りと言うことです。

ちなみに、言うのは簡単ですが実際に臨検に至ったケースは極めてレアで、平成20~30年の10年間で17件にとどまるそうです。やはり、強制的な立入りということになると、その後の(保護者との)関係性構築をしていくのは非常に難しくなってくるので、児相としてもなかなか踏み切れないようですね。

(児童虐待の定義)
第二条 この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。
一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

引用:児童虐待防止法
  4 本人と同居していない者が保護者に該当することはない。 

ちょっと順番が逆になってしまった感がありますが、児童虐待の種類に触れたいところです。

  • 身体的虐待
  • 性的虐待
  • ネグレクト
  • 心理的虐待

以上4類型となります。高齢・障がいについては、これに経済的虐待が加わることになります。児童だけ経済的は無いことに注意。また、配偶者(婚姻関係のない同居人によるものを含む)に対する暴力を、子どもの前で行うことも心理的虐待に含まれます。

なお、選択肢4ですが保護者が同居しないで必要な監護を行わなかった場合がこの選択肢に相当すると思われ、ネグレクトに該当すると思われます。したがって、選択肢4は誤り

  5 児童虐待には,保護者がわいせつな行為をさせることは含まれない。 

これは条文にはっきり書かれていますね。”児童をしてわいせつな行為をさせること”は虐待ですよ(性的虐待)、とされていますので明確に誤りです。

おまけ 公認心理師試験対策向け 教育委員会による出席停止について

児童は保護者の監護下にあり、財産も保護者が管理しているから経済的虐待は無い、と自分は解釈しています。教育委員会による出席停止処置も、保護者に対して行うということを、併せて覚えると効率が良いのでは無いでしょうか。

学校は,児童生徒が安心して学ぶことができる場でなければならず,その生命及び心身の安全を確保することが学校及び教育委員会に課せられた基本的な責務です。学校において問題行動を繰り返す児童生徒には,学校の秩序の維持や他の児童生徒の義務教育を受ける権利を保障する観点からの早急な取組みが必要であり,児童生徒を指導から切り離すことは根本的な解決にはならないという基本認識にたって,一人一人の児童生徒の状況に応じたきめ細かい指導の徹底を図ることが必要です。
 しかし,公立小学校及び中学校において,学校が最大限の努力をもって指導を行ったにもかかわらず,性行不良であって他の児童生徒の教育の妨げがあると認められる児童生徒があるときは,市町村教育委員会が,その保護者に対して,児童生徒の出席停止を命ずることができます。(学校教育法第26条,第40条)。
 この出席停止制度は,本人の懲戒という観点からではなく,学校の秩序を維持し,他の児童生徒の義務教育を受ける権利を保障するという観点から設けられています。

出所:文部科学省HP
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