2018年度(第31回)社会福祉士国家試験過去問解説 第82問 クーリングオフ

問題82 事例を読んで,特定商取引に関する法律に規定するクーリング・オフによる契約の解除(解約)に関して,最も適切なものを1 つ選びなさい。
〔事 例〕
一人暮らしのDさんは,訪れてきた業者Eに高級羽毛布団を買うことを勧められ,代金80 万円で購入する契約を締結し,その場で,Dさんは業者Eに対して,手元にあった20 万円を渡すとともに,残金60 万円を1 か月以内に送金することを約束し,業者Eは,商品の布団と契約書面をDさんに引き渡した。


1 Dさんが業者Eに対して解約の意思を口頭で伝えた場合は,解約できない。
2 Dさんは取消期間内に解約書面を発送したが,取消期間経過後にその書面が業者
Eに到達した場合は,解約できない。
3 Dさんが商品の布団を使用してしまった場合は,解約できない。
4 Dさんが解約した場合,業者Eは受領済みの20 万円を返還しなければならない。
5 Dさんが解約した場合,Dさんの負担によって布団を返送しなければならない。


引用元: 第31回(平成30年度)社会福祉士国家試験 試験問題

クーリングオフについて

クーリングオフについての問題ですね。私の支援していた方も、問題となったケースがありました。このような時は国民生活センターを頼りますが、クーリングオフ制度についても言及されています。

クーリングオフは、問題文にもあるとおり「 特定商取引に関する法律 」、いわゆる特定商取引法に規定されています。なお、同法はけっこうボリュームがあり、「クーリングオフ」という用語は使われていません。そして、該当する条文は下記の通りです。

(訪問販売における契約の申込みの撤回等)
第九条 販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等以外の場所において商品若しくは特定権利若しくは役務につき売買契約若しくは役務提供契約の申込みを受けた場合若しくは販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等において特定顧客から商品若しくは特定権利若しくは役務につき売買契約若しくは役務提供契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者又は販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等以外の場所において商品若しくは特定権利若しくは役務につき売買契約若しくは役務提供契約を締結した場合(営業所等において申込みを受け、営業所等以外の場所において売買契約又は役務提供契約を締結した場合を除く。)若しくは販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等において特定顧客と商品若しくは特定権利若しくは役務につき売買契約若しくは役務提供契約を締結した場合におけるその購入者若しくは役務の提供を受ける者(以下この条から第九条の三までにおいて「申込者等」という。)は、書面によりその売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回又はその売買契約若しくは役務提供契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。ただし、申込者等が第五条の書面を受領した日(その日前に第四条の書面を受領した場合にあつては、その書面を受領した日)から起算して八日を経過した場合(申込者等が、販売業者若しくは役務提供事業者が第六条第一項の規定に違反して申込みの撤回等に関する事項につき不実のことを告げる行為をしたことにより当該告げられた内容が事実であるとの誤認をし、又は販売業者若しくは役務提供事業者が同条第三項の規定に違反して威迫したことにより困惑し、これらによつて当該期間を経過するまでに申込みの撤回等を行わなかつた場合には、当該申込者等が、当該販売業者又は当該役務提供事業者が主務省令で定めるところにより当該売買契約又は当該役務提供契約の申込みの撤回等を行うことができる旨を記載して交付した書面を受領した日から起算して八日を経過した場合)においては、この限りでない。

引用:特定商取引に関する法律

・・・若しくは(もしくは)が多すぎて、何のことかさっぱりわかりません。この法律に関しては、条文を読み込むより、 国民生活センターのHPをしっかり読んだり、特定商取引法ガイドに掲載されているパンフレットに詳しくまとめられていますのでオススメです。

クーリングオフ制度の出題ポイント・通信販売は対象外

本問題では問われていませんが、クーリングオフ制度で通信販売は対象外とされています。テレビ・ラジオの有名通信販売業者では、返品制度が有っりますが、これはクーリングオフ制度によるものでないことは注意してください。

(通信販売における契約の解除等)
第十五条の三 通信販売をする場合の商品又は特定権利の販売条件について広告をした販売業者が当該商品若しくは当該特定権利の売買契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者又は売買契約を締結した場合におけるその購入者(次項において単に「購入者」という。)は、その売買契約に係る商品の引渡し又は特定権利の移転を受けた日から起算して八日を経過するまでの間は、その売買契約の申込みの撤回又はその売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。

引用:特定商取引に関する法律

この問題は不適切では無いでしょうか?口頭でのクーリングオフについて

 1 Dさんが業者Eに対して解約の意思を口頭で伝えた場合は,解約できない。

2019年、芸能事務所とお笑い芸人との間で契約書を取り交わしていない・・・という問題が話題になりましたね。 契約は、口頭でも成立します。 解約の意思表示も、口頭で足ります。その点から、この選択肢は誤りと考えられます。しかし、法律をよく見てみましょう。 特定商取引法 第9条の2項で、下記の通り規定されています。

2 申込みの撤回等は、当該申込みの撤回等に係る書面を発した時に、その効力を生ずる。

引用:特定商取引に関する法律 第九条

条文では、申込みの撤回は書面で行うこととしています。その点では、この選択肢は微妙ではないでしょうか。言った・言わないが問題になりますので、しっかりと記録に残る形で解約の意思表示をする方が、実務的にも求められると思いますし。

2 Dさんは取消期間内に解約書面を発送したが,取消期間経過後にその書面が業者
 Eに到達した場合は,解約できない。

書面を“発した時に、その効力を生ずる”→期間内に書面を発送すれば良い、ということです。したがって、この選択肢は誤りです。これはややこしいところですね。

3 Dさんが商品の布団を使用してしまった場合は,解約できない。

クーリングオフ制度では、消費することにより、価値が著しく減少するもの(食べると無くなってしまうものや、化粧品など)を、対象外としていますが、逆に言えば、それ以外のものは返品ができることとなっており、布団も例外ではありません。しがたって、この選択肢は誤りです。

5 Dさんが解約した場合,Dさんの負担によって布団を返送しなければならない。

返品費用は、業者もちとなります。また、違約金を徴収したり、ということも法で禁じられています。

正答は4 明らかに正しい内容のため

4 Dさんが解約した場合,業者Eは受領済みの20 万円を返還しなければならない。

これはもう、あたり前の内容なので、正答です。

いっぽう、しつこいようですが、選択肢1は微妙だなあ・・・・”もっとも適切”な選択肢、という点で、4を選ばざるを得ないとは思いますが。

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