2018年度(第31回)社会福祉士国家試験過去問解説 第67問 福祉事務所の組織と業務

問題 67

社会福祉法に定める福祉に関する事務所(福祉事務所)の組織と業務に関する次の記述のうち,最も適切なものを 1 つ選びなさい。


1 福祉事務所の指導監督を行う所員及び現業を行う所員は,都道府県知事又は市町村長の事務の執行に協力する機関である。
2 現業を行う所員は,援護,育成又は更生の措置を要する者の家庭を訪問するなどして,生活指導を行う事務をつかさどる。
3 厚生労働大臣の定める試験に合格しなければ,社会福祉主事になることができない。
4 福祉事務所の長は,福祉事務所の指導監督を行う所員の経験を 5 年以上有した者でなければならない。
5 福祉事務所の指導監督を行う所員及び現業を行う所員は,社会福祉主事でなくてもよい。


引用元: 第31回(平成30年度)社会福祉士国家試験 試験問題

福祉事務所についての問題

福祉事務所についてですね。いつものように、根拠法を見ていきたいと思いますが、福祉時住所は、社会福祉法の第14条に規定されています。

第十四条 都道府県及び市(特別区を含む。以下同じ。)は、条例で、福祉に関する事務所を設置しなければならない。
2 都道府県及び市は、その区域(都道府県にあつては、市及び福祉に関する事務所を設ける町村の区域を除く。)をいずれかの福祉に関する事務所の所管区域としなければならない。
3 町村は、条例で、その区域を所管区域とする福祉に関する事務所を設置することができる。
4 町村は、必要がある場合には、地方自治法の規定により一部事務組合又は広域連合を設けて、前項の事務所を設置することができる。この場合には、当該一部事務組合又は広域連合内の町村の区域をもつて、事務所の所管区域とする。
5 都道府県の設置する福祉に関する事務所は、生活保護法、児童福祉法及び母子及び父子並びに寡婦福祉法に定める援護又は育成の措置に関する事務のうち都道府県が処理することとされているものをつかさどるところとする。
6 市町村(特別区を含む。以下同じ。)の設置する福祉に関する事務所は、生活保護法、児童福祉法、母子及び父子並びに寡婦福祉法、老人福祉法、身体障害者福祉法及び知的障害者福祉法に定める援護、育成又は更生の措置に関する事務のうち市町村が処理することとされているもの(政令で定めるものを除く。)をつかさどるところとする。
7 町村の福祉に関する事務所の設置又は廃止の時期は、会計年度の始期又は終期でなければならない。
8 町村は、福祉に関する事務所を設置し、又は廃止するには、あらかじめ、都道府県知事に協議しなければならない。

出所:社会福祉法

福祉事務所については、厚生労働省の、福祉事務所についての説明がわかりやすいです。さて、この条文における” 福祉に関する事務所 ”というのが、福祉事務所のことです。そして、都道府県および市は、”設置しなければならない”義務とされています。町村は、”設置することができる”なので、設置義務はありません

職員配置基準は第十五条

第十五条 福祉に関する事務所には、長及び少なくとも次の所員を置かなければならない。ただし、所の長が、その職務の遂行に支障がない場合において、自ら現業事務の指導監督を行うときは、第一号の所員を置くことを要しない。
一 指導監督を行う所員
二 現業を行う所員
三 事務を行う所員
2 所の長は、都道府県知事又は市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)の指揮監督を受けて、所務を掌理する。
3 指導監督を行う所員は、所の長の指揮監督を受けて、現業事務の指導監督をつかさどる。
4 現業を行う所員は、所の長の指揮監督を受けて、援護、育成又は更生の措置を要する者等の家庭を訪問し、又は訪問しないで、これらの者に面接し、本人の資産、環境等を調査し、保護その他の措置の必要の有無及びその種類を判断し、本人に対し生活指導を行う等の事務をつかさどる。
5 事務を行う所員は、所の長の指揮監督を受けて、所の庶務をつかさどる。
6 第一項第一号及び第二号の所員は、社会福祉主事でなければならない。

出所:社会福祉法

福祉事務所に配置しないといけない職員は、以下の通りとなります。

社会福祉主事
所長不要
指導監督を行う所員(所長が兼務可)
現業を行う所員
事務を行う所員不要

選択肢5 福祉事務所の指導監督を行う所員及び現業を行う所員は,社会福祉主事でなくてもよい。 →  第十五条6項  第一項第一号(指導監督を行う所員)及び第二号の所員(現業を行う所員)は、社会福祉主事でなければならない。 と齟齬があるため、不正解

4 福祉事務所の長は,福祉事務所の指導監督を行う所員の経験を 5 年以上有した者でなければならない。 →  また、福祉事務所の長は、指導監督を行う所員の経験は法律上は規定されていません。運用上は、選択肢のように、5年程度の経験を経た後に認容されることが一般的かもしれませんが、規定はされていないので誤りです。

福祉事務所は、市町村長の指揮監督を受ける

1 福祉事務所の指導監督を行う所員及び現業を行う所員は,都道府県知事又は市町村長の事務の執行に協力する機関である。  → 対応する条文は、 ”所の長は、都道府県知事又は市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)の指揮監督を受けて、所務を掌理する。” となっています。指揮監督と、協力は大きく違いますね。選択肢1は誤りです。

社会福祉主事に試験はありません

3 厚生労働大臣の定める試験に合格しなければ,社会福祉主事になることができない。  → 以前は試験を受けて・・・というコースもあったようですが、現在は行われていないようです。また、社会福祉主事へのルートは試験以外にも複数あるため、合格しないとなれない、という本選択肢は明確に誤りです。

社会福祉主事(任用資格)は、福祉事務所の所員となるため必要な資格ですが、大学で指定された科目のうち3科目を修了して卒業する、いわゆる3科目主事と、養成課程を卒業して取得する方法、社会福祉士または精神保健福祉士を取得することによる方法があります。

ちなみに、私は3科目主事で相談員をやっていた経験があり、キャリア形成のうえでずいぶん助けられました。なかなかできないですが、いずれ主事についての記事を別途書きたいと思っています。(転職に役立つケースあり)

残った、選択肢2が正答です。

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