2018年度(第31回)社会福祉士国家試験過去問解説 第66問 生活保護における扶養義務者との関わり
問題66
事例を読んで,生活保護における扶養義務者との関わりについて,最も適切なものを1 つ選びなさい。
〔事 例〕
Kさん(67 歳)は,福祉事務所で生活保護の申請をした。Kさんには長年音信不通の息子(40 歳)がいる。福祉事務所は息子の居住地を把握し,Kさんに対する扶養の可能性を検討している。引用元: 第31回(平成30年度)社会福祉士国家試験 試験問題
1 息子が住民税非課税であっても,息子はKさんに仕送りをしなければならない。
2 Kさんは,息子と同居することを条件に生活保護を受給することができる。
3 福祉事務所は,息子の雇主に対して給与について報告を求めることができない。
4 感情的な対立があることを理由に息子が扶養を拒否した場合,Kさんは生活保護を受給することができない。
5 福祉事務所は,息子が仕送りを行った場合,その相当額を収入として認定する。
生活保護の扶養義務者について
生活保護の扶養義務者についての問題です。事例問題の体をとっていますが、実際には知識を問う問題となっているかとおもいます。生活保護法をまたみていきましょう。
第二十九条 保護の実施機関及び福祉事務所長は、保護の決定若しくは実施又は第七十七条若しくは第七十八条の規定の施行のために必要があると認めるときは、次の各号に掲げる者の当該各号に定める事項につき、官公署、日本年金機構若しくは国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)第三条第二項に規定する共済組合等(次項において「共済組合等」という。)に対し、必要な書類の閲覧若しくは資料の提供を求め、又は銀行、信託会社、次の各号に掲げる者の雇主その他の関係人に、報告を求めることができる。
出所:生活保護法
一 要保護者又は被保護者であつた者 氏名及び住所又は居所、資産及び収入の状況、健康状態、他の保護の実施機関における保護の決定及び実施の状況その他政令で定める事項(被保護者であつた者にあつては、氏名及び住所又は居所、健康状態並びに他の保護の実施機関における保護の決定及び実施の状況を除き、保護を受けていた期間における事項に限る。)
二 前号に掲げる者の扶養義務者 氏名及び住所又は居所、資産及び収入の状況その他政令で定める事項(被保護者であつた者の扶養義務者にあつては、氏名及び住所又は居所を除き、当該被保護者であつた者が保護を受けていた期間における事項に限る。)
2 別表第一の上欄に掲げる官公署の長、日本年金機構又は共済組合等は、それぞれ同表の下欄に掲げる情報につき、保護の実施機関又は福祉事務所長から前項の規定による求めがあつたときは、速やかに、当該情報を記載し、若しくは記録した書類を閲覧させ、又は資料の提供を行うものとする。
生活保護法29条では、調査について規定されています。これによると、金融機関や雇い主に対して、調査依頼をすることができ、その対象は要保護者、被保護者であった者、扶養義務者とされています。
選択肢3 福祉事務所は,息子の雇主に対して給与について報告を求めることができない。 →息子は扶養義務者となりますので、その雇い主に対して調査を依頼することが可能です。したがって、この選択肢は誤り。注意したいのは、雇い主に回答の義務は無いことです。あくまで” 雇主その他の関係人に、報告を求めることができる。 ”であることに注意してください。また、この回答の結果、息子に十分に扶養の資力があると思われても、それをもって保護の差し止め等はできないことも併せて留意ください。
民法の扶養義務が保護に優先して行われるとは?
(保護の補足性)
出所:生活保護法
第四条 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2 民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
3 前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。
生活保護法第4条の2ですが、これは例えば仕送りがあった場合には、その分を収入として認定して、保護費を減額しますよ、という解釈になります。すなわち、選択肢5 福祉事務所は,息子が仕送りを行った場合,その相当額を収入として認定する。 が正答です。
この部分が誤解されることが多いのではないでしょうか?いわゆる水際作戦ということで、扶養義務者の協力が保護の前提であるかのように説明し、保護そのものを諦めさせるというような福祉事務所の対応が問題になりました。生活困窮者への相談援助は、社会福祉士として活躍していく上で直面することが多いのではないでしょうか。しっかりと理解していきましょう。