2018年度(第31回)社会福祉士国家試験過去問解説 第61問 障がい者の65歳問題
問題61
事例を読んで,Jさんに対する現段階での相談支援事業所の活動に関する次の記述のうち,最も適切なものを1 つ選びなさい。
〔事 例〕
自宅で一人暮らしのJさん(肢体不自由,男性,車椅子使用)は,これまで1 日2時間の居宅介護と週に数回の移動支援を利用してきた。Jさんは3 か月後に65 歳となるが,介護保険への移行について不安な気持ちを持っている。最近,腕の筋力低下と首の痛みがでてきたことで,一人暮らしを続けることができるか心配になり,相談支援事業所に相談した。
1 地域移行支援を活用して,地域生活を安定させる。
2 県の介護保険担当部署の連絡先を紹介する。
3 腕の筋力の増強訓練のため,自立訓練(生活訓練)の申請を行う。
4 住宅環境を整備するため,介護保険の住宅改修を含めたサービス等利用計画案を作成する。
5 介護保険制度の説明を行い,介護保険への移行などについて理解を得られるよう働き掛ける。
引用元: 第31回(平成30年度)社会福祉士国家試験 試験問題
65歳問題について。いろいろな要素が詰まった問題ですね。
これまで障害者総合支援法のサービスを利用してきた方が、65歳到達に伴い介護保険優先ということで、その移行を検討していく、というケースですね。
介護保険優先ということになりますが、介護保険側に無いサービスは、引き続き障害者総合支援法のサービスを継続して利用できる、というのが一つポイントですね。もっとも、私はケアマネ所持していますが、ケアマネにはそういった認識が乏しいな、ということを障害分野で働くようになって実感しています。制度が複雑すぎることが問題だとおもいますし、65歳、という年齢(40歳以上の特定疾病も含む)で、介護保険の対象者になった途端に線をひく、というのはやはり問題があるように思います。
介護保険のケアプランを作成するのは、介護支援専門員(ケアマネジャー) ※自己プランも可
2 県の介護保険担当部署の連絡先を紹介する。 →介護保険を今後利用していく方の不安を解消していく、と言うケースですが、この場合は相談支援専門員自身が説明をする、ということと、実際にケアプランを作成するケアマネと仲介することが求められていく物と思われます。したがって、県の介護保険担当部署というのは・・・。これは誤りでしょうね。
4 住宅環境を整備するため,介護保険の住宅改修を含めたサービス等利用計画案を作成する。 →介護保険のサービス等利用計画案を作成するのは、居宅介護支援事業所のケアマネの仕事です。誤り
5 介護保険制度の説明を行い,介護保険への移行などについて理解を得られるよう働き掛ける。 →正答 まずは説明する、と言う無難な内容です。面白みが無い回答ですが。
障害者総合支援法と介護保険のサービス理解が必要
1 地域移行支援を活用して,地域生活を安定させる。 → 地域移行支援は、施設等に入所している障害者が、在宅やグループホームで自立して生活していくことを援助していくサービスです。この方はもともと在宅生活の方なので、地域移行支援の対象にはならないですね。誤り。
3 腕の筋力の増強訓練のため,自立訓練(生活訓練)の申請を行う。 →自立訓練は、介護保険のリハビリ(デイケア、訪問リハビリ)が優先となります。65歳を間近に控えている人には勧めにくいですね。誤り。
※おまけ 移動支援について
障害者総合支援法の移動支援ですが、介護保険で相当するサービスはヘルパーによる訪問介護になろうかと思います。移動支援との大きな違いは、余暇活動等社会参加のためのサービス利用ですね。私の担当する利用者の方も余暇活動で利用されています。このことは高齢分野で活躍されている方はご存じない方が多いのでは無いでしょうか?ご留意ください。