2018年度(第31回)社会福祉士国家試験解説 第30問 社会福祉法

問題30

 社会福祉法に関する次の記述のうち,正しいものを1 つ選びなさい。


1 第一種社会福祉事業の経営は,国・地方公共団体に限定されている。
2 2000 年(平成12 年)の社会福祉基礎構造改革の際に,社会福祉事業法の題名が改められたものである。
3 「社会福祉事業」を行わない事業者であっても社会福祉に関連する活動を行う者であれば,社会福祉法人の名称を用いることができる。
4 市町村に対して,福祉人材センターの設置を義務づけている。
5 国,地方公共団体と社会福祉事業を経営する者との関係を規定した「事業経営の準則」は,社会福祉法では削除された。

引用元: 第31回(平成30年度)社会福祉士国家試験 試験問題

社会福祉法人について 社会福祉士を目指すなら社会福祉法人についての深い知識は必須

第30問ですね。これで1/5まできました。節目となるこの問題は、社会福祉法人についてです。社会福祉士ならば、社会福祉法人についてはしっかり理解しておくことが重要です。就職先として社会福祉法人を選ぶ方も多いと思います。人気?の社会福祉協議会(社協)も、実は社会福祉法人です。

全国社会福祉協議会とは
「社会福祉協議会(社協)」は、社会福祉法に基づきすべての都道府県・市町村に設置され、地域住民や社会福祉関係者の参加により、地域の福祉推進の中核としての役割を担い、さまざまな活動を行っている非営利の民間組織です。
全国社会福祉協議会(全社協)は、これら社協の中央組織として、全国各地の社協とのネットワークにより、福祉サービス利用者や社会福祉関係者の連絡・調整や活動支援、各種制度の改善への取り組みなど、わが国社会福祉の増進に努めています。

引用元:全社協HP

はい、ここでのポイントは ”「社会福祉協議会(社協)」は、社会福祉法に基づきすべての都道府県・市町村に設置 ”ですね。ご自身がお住まいの社協を調べてみてくださいね。今のご時世、たいていホームページが有ります。この問題では問われていない内容ですが、是非とも覚えておきましょう。

社協つながりで、福祉人材センターは覚えておきましょう

福祉人材センターを皆さんはご存じですか?介護現場で働いていても、知らない人が多いようです。

都道府県福祉人材センターは、社会福祉法に基づき、都道府県知事の指定を受けて、都道府県社会福祉協議会に設置されているものです。また、無料職業紹介事業については、職業安定法に基づき、厚生労働大臣の許可を得て行っています。

引用元:福祉人材センター・バンク(福祉のお仕事)HP

ということで、福祉人材センターは、都道府県社協に設置されています。具体的な業務内容ですが、無料の職業紹介や、研修を行っています。私は認知症介護実践研修や、介護支援専門員研修を福祉人材センターにて受講しました。

第九十四条 都道府県センターは、当該都道府県の区域内において、次に掲げる業務を行うものとする。
一 社会福祉事業等に関する啓発活動を行うこと。
二 社会福祉事業等従事者の確保に関する調査研究を行うこと。
三 社会福祉事業等を経営する者に対し、第八十九条第二項第二号に規定する措置の内容に即した措置の実施に関する技術的事項について相談その他の援助を行うこと。
四 社会福祉事業等の業務に関し、社会福祉事業等従事者及び社会福祉事業等に従事しようとする者に対して研修を行うこと。
五 社会福祉事業等従事者の確保に関する連絡を行うこと。
六 社会福祉事業等に従事しようとする者について、無料の職業紹介事業を行うこと。
七 社会福祉事業等に従事しようとする者に対し、その就業の促進に関する情報の提供、相談その他の援助を行うこと。
八 前各号に掲げるもののほか、社会福祉事業等従事者の確保を図るために必要な業務を行うこと。

出所:社会福祉法

ということで、選択肢4は誤りです。(市町村でなく都道府県に設置)。実際に利用したことがあるかどうか?というエピソード記憶の有無で明暗が分かれますね?そんな風に知識の定着をはかっていくと良いでしょう。

で、社会福祉法人って何?

ちょっと順番が前後しましたが、社会福祉法人とはなんぞや?というのは知っておく必要があります。社会福祉法を紐解きましょう。

第二十二条 この法律において「社会福祉法人」とは、社会福祉事業を行うことを目的として、この法律の定めるところにより設立された法人をいう。

出所:社会福祉法

はい、社会福祉法の第二十二条。社会福祉事業を行うことを目的として設立された法人ですよ。選択肢3は明確に誤りですね。

社会福祉法人は、優遇されているがゆえ、制約が多くある法人、と抑える。

社会福祉法人のポイントは、1.優遇されている面がある 2.様々な制約がある という点を絶対におさえておいてください。具体的には、下記の通り。

税制優遇 税金がかからない(ただし、本業について) 

社会福祉法人が優遇されているのは、なんといっても通常の法人運営、すなわち社会福祉事業等を行う範囲においては法人税等の税金がかかりません。他にも、NHKの受信料免除(要申請、職員休憩室等はダメ)、登録免許税の免除、自動車税の免除etc.・・・公租公課と呼ばれるもののほか、民間団体からも優遇措置が受けられるケースがあります(エクセルが格安で買えるなど、条件あり)。

例えば、介護保険下でのデイサービス(通所介護)は、株式会社が運営した場合、その利益に対して法人税や住民税、事業税といった税金が課税されますが、社会福祉法人の場合は税金がかかりません。これはものすごく大きいと思います。

制約 非常に大きな制約がある。運営の透明性の確保など・・・

税金払わなくて良いなら、みんな社会福祉法人を設立したほうが得じゃないか、と思われた方もいらっしゃるかも知れません。やはり、簡単な話ではなく、社会福祉法人には大きな制約があります。数え上げるとキリがないのですが、社会福祉法人の稼ぎ出したお金は、原則外に出すことが出来ません。株式会社の場合大きな利益が出た場合は、配当という形で株主に還元をすることができます(だから、お金のある人は株式を買うのです)。社会福祉法人は、一定の計算の下で余裕資金(社会福祉充実残額)がある場合は公益的事業に投下しなくてはならず、例えば理事長報酬に色をつけて多めに出すということは許されません(近年の社会福祉法人制度改革の中身を参考)。その他にも、借り入れ時の担保提供の制限や、不動産は自己所有が原則であるなど、これでもかと規制がかかっています。

制約が多いゆえに、経営の安定性が担保されている(例外あり)

社会福祉法人はその優遇措置と制約ゆえに、経営が安定していると一般的に言われています。そのため、利用者保護が求められる事業を行うことが期待され、そのような事業は社会福祉法人(と行政)しか行うことが出来ないのです。それが社会福祉事業です。

社会福祉事業(第一種 第二種)の違いは絶対に覚えましょう!

試験でもよく問われる第一種社会福祉事業と、第二種社会福祉事業。よく出る理由は二つ。重要だから、そして覚えにくいからですね。実際に社会福祉法人で届け出などを担当すると、この辺りは浴びる程かかわることになりますので、嫌でも覚えますよ。

 第一種社会福祉事業が行えるのは社会福祉法人と自治体だけ!

第一種社会福祉事業は、社会福祉法人と自治体のみです。第二種は、法人格を問いませんので、とにかく第一種の事業を覚えればOKです。

第一種社会福祉事業の代表格は、特別養護老人ホーム、児童養護施設、養護老人ホーム、共同募金です。とりわけ、共同募金はひっかけ問題を作りやすいですから、試験対策では絶対に覚えておきましょう。(実務では役に立たないけど・・・)

【第1種社会福祉事業とは】
利用者への影響が大きいため、経営安定を通じた利用者の保護の必要性が高い事業(主として入所施設サービス)です
経営主体
行政及び社会福祉法人が原則です。施設を設置して第1種社会福祉事業を経営しようとするときは、都道府県知事等への 届出が必要になります。
その他の者が第1種社会福祉事業を経営しようとするときは、都道府県知事等の 許可を得ることが必要になります。
個別法により、保護施設並びに養護老人ホーム及び特別養護老人ホームは、行政及び社会福祉法人に限定されています。

引用元:厚労省HP

選択肢1は、肝心かなめの社会福祉法人が抜け落ちていますから、誤りです。

社会福祉基礎構造改革は試験対策で外せない内容

とにかく、社会福祉基礎構造改革は、どれだけ時間かけても良いくらいの得点源です。 社会福祉事業法が社会福祉法になったのと併せて、これまでの措置から契約になり、 サービスを利用者が自己選択できるようになった、というポイントを軸に、できるだけ時間をかけて理解を進めていきましょう。選択肢2が、そのもので正解です。

社会福祉法は、試験・実務ともに非常に重要。時間をしっかりかけて覚えましょう。

社会福祉法は現行法で、実務上も密接にかかわってきます。社会福祉法人で働くこともありうるでしょう。昨今の社会福祉法人制度改革とあわせて、しっかり学習していきましょう。

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