2018年度(第31回)社会福祉士国家試験解説 第55問 諸外国における医療や介護の制度
問題 55
諸外国における医療や介護の制度に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。
1 アメリカには,全国民を対象とする公的な医療保障制度が存在する。
2 イギリスには,医療サービスを税財源により提供する国民保健サービスの仕組みがある。
3 フランスの医療保険制度では,被用者,自営業者及び農業者が同一の制度に加入している。
4 ドイツの介護保険制度では,介護手当(現金給付)を選ぶことができる。
5 スウェーデンには,介護保険制度が存在する。
引用元: 第31回(平成30年度)社会福祉士国家試験 試験問題
選択肢1と4は理解しておきたいところ。その他の選択肢は厚労省のHPを参考に。
選択肢1 アメリカには、全国民を対象とする公的医療保障制度は存在しません(?)
2019年7月現在、アメリカは、いわゆるオバマケア(国民皆保険を目指した医療保険制度改革)の見直し、の動きがあります。でもこれはちょっと微妙な選択肢かな・・・と思います。
もともと、アメリカは医療費がとても高額で有名です。私も昔海外旅行でアメリカに行ったことがありますが、旅行保険には必ず加入しておくように、とすすめられました。ジェイアイ傷害保険によると、盲腸で入院すると1~300万円くらいかかるようです。(2004年時点)
外務省のHPにも、医療費が高額である旨の記載があります。
(2)海外旅行保険の必要性
引用: 外務省のHP
アメリカ国内で入院治療を受けたものの,保険に加入していなかったために,莫大な治療費の支払いに苦しむ邦人旅行者が後を絶ちません。アメリカで重症の急病,事故に遭った場合,その治療費用が数千万円以上になるのが普通です。海外を旅行する際は,十分な補償内容の海外旅行保険に加入しておくようお勧めします。また,保険の発効日は日本出国の当日からにすること,滞在中に契約期間が切れないようにすること等にも留意が必要です。
医療費が高額な理由は色々と理由があるようですが、この高すぎる医療費ゆえ、疾病を理由とした貧困への転落というものが社会問題となっているようです。保険は会社で加入する医療保険(民間保険)となるため、失業すれば当然にその権利を失い、以後は自費による診療となります。失業による収入の不安定化とあわせて、高額な医療費は相当なインパクトとなるでしょう。
オバマケアでは国民皆保険を目指す、とされていますが、現時点での加入率は91%くらいということです。加入は義務とされていますが、前述のように加入していない人がいます(以前は未加入者にペナルティが有りましたが、2019年1月以降はペナルティは無くなりました)。
オバマケアにより、病歴のある方も加入したことにより保険料が高騰したことがアメリカ国民の不満になっているようです。オバマケアの今後は、トランプ政権の重大な課題なので、注視していきたいところですね。
選択肢4 正答 ドイツの介護保険制度は、日本が参考にした制度ですが、相違点があり。
ドイツは日本に先行して介護保険を導入した国で、日本が参考にしているものです。しかしながら相違点がいくつかあって、違いを抑えておくことは重要かと思います。
- 現金給付を選ぶことができる
- 年齢による制限が無い
- 財源が100%保険料
割とこれは問われる内容だと思います。
その他の選択肢(2,3,5)から一つ正答を選ぶ
さて、ここからは私は勘で選びましたが撃沈・・・。で、調べてみましたが毎度おなじみ、厚労省のHPに資料が有りました!
これによると、スウェーデンには「介護保険」は存在しませんね。したがって、選択肢5は誤り。
イギリスの医療制度は、NHSという保険制度があります。ロンドン留学センターの記事がわかりやすいですね。
NHS (National Health Service) はイギリス政府が運営する国民保険サービスです。税収などの一般財源によって賄われている医療機関のため、利用者の経済的な支払い能力にかかわらず利用が可能であり、原則無料で提供されていますい(処方薬、歯科、眼科検診を除く)。
出所: ロンドン留学センター
ということで、選択肢2も正答です。
フランスは制度が複雑で調べきれませんでした・・・消去法で×
フランスは皆保険、ということと総合診療医が居るよ、ということはわかったのですが、今回の選択肢を誤りと自信を持って指摘できる論拠が見つけられませんでした。職域保険で、昔のギルド的にやってることはわかったのですが、制度的には同一に見えますが,違うのですね。煮え切らなくてすみません。