2018年度(第31回)社会福祉士国家試験解説 第54問 健康保険の第三者行為

問題54

 事例を読んで,健康保険などに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
会社員のFさん(35 歳,男性)は,健康保険の被保険者であり,妻のGさん(33歳)と同居している。GさんはFさんの加入する健康保険の被扶養者である。ある休日,FさんはGさんを同乗させ,自家用車を運転して行楽に出掛ける途中,誤ってガードレールに衝突する自損事故を起こし,二人ともケガをしたので,治療のため病院に行った。


1 事故はFさんの過失によるものなので,健康保険は適用されず,FさんとGさんは治療費を全額負担しなければならない。
2 事故はFさんの過失によるものなので,Fさんには健康保険が適用されないが,Gさんには治療費について健康保険の給付が行われる。
3 ケガのため,翌日から連続して会社を休み,その間,給与の支払がなかった場合,Fさんは休業4 日目から傷病手当金を受けられる。
4 Gさんがパートで働いており,仕事を休む場合,Gさんは傷病手当金を受けられる。
5 Fさんのケガは,労働者災害補償保険の療養補償給付の対象となる。


引用元: 第31回(平成30年度)社会福祉士国家試験 試験問題

第三者行為と、健康保険、自動車保険・・・内容の濃い問題ですね!

まず選択肢1ですが、交通事故=健康保険が使えない、と思っている人は結構いますね。これは誤りです。まず第一に、健康保険の給付対象とならないのは、第三者行為です。第三者行為について、最もわかりやすいのは、喧嘩です。喧嘩をすることによって、相手のパンチでけがをした場合。これは、「喧嘩しなかったらケガをしなかった」わけです。相手がはっきりわかっているわけだし、そんな怪我の治療は、殴った相手が治療費払うべきだろ!、というのが第三者行為の考え方です(ちょっと乱暴な説明ですが、こんな風に理解するとわかりやすい)。

自動車事故も、例えば車に乗っている人が歩行者をはねたり、相手の車にぶつかって、相手の運転者にけがをさせたのであれば、第三者行為です。車にはねられた人の治療費は、車の運転手が払うべきであって、公的医療保険から給付される性格のものでは無いのです。健康保険を使わない医療費は、保険診療ではない自由診療となりますので、医療機関の言い値となります。ドライバーは、自賠責保険や自動車の任意保険に加入して、事故に備えているわけですね。

最近は自転車の事故についても高額の賠償が話題になりますね。こちらも第三者行為ですね。

正答は選択肢3 保険給付が制限されるケースを理解する。

特に、 第三者行為 について正しく理解しておくことは大切。

さて、再度選択肢1です。このケースは自損事故ですね。運転手Fさんのケガについては、ガードレールが加害者と仮定するとわかりやすいのではないでしょうか。これは第三者行為と言えませんので、健康保険からの給付が受けられます。したがって、選択肢1は誤り。いっぽう、妻のGさんはFさんの運転行為によって受傷しているということで、第三者行為に該当します。ちなみに、自動車保険の対人賠償は、運転手の配偶者に対しては使用できません人身傷害などで対応することになりますので、参考までに。

第三者行為届を提出すれば、保険給付を受けることは可能。しかし、その分の請求は保険者から第三者(相手方)に請求されますよ。

誤解している人が多いですが、交通事故等の第三者行為であっても、保険給付を受けること自体は可能です。つまり、窓口で3割負担で済むわけです。ただし、残りの7割の医療費については、保険者が言わば「立て替え」をしている状態です。したがって、相手方にその7割分を「立て替えた」保険者が、相手方に請求することになります。ちなみに、窓口で払った3割も、本来は相手方に請求することができますし、慰謝料や休業補償も受ける権利が有ります。そういったことは自動車保険を通せば保険会社が対応をするはずですから、原則的には保険会社通した方がいいと思います。

私自身、第三者行為届を書いたことがありますが、相手方の情報を書かないといけません。その時は通勤中で、自転車にはねられて、相手に逃げられてしまい、相手先不明で書きました。通勤災害の第三者行為です。

自殺未遂の場合、医療費負担が重くのしかかる事態に

選択肢2  事故はFさんの過失によるものなので・・・ →過失だから給付が受けられないということはないです。健康保険の給付制限となるのは、「故意による受傷」です。具体的には、「自殺未遂」などです。

選択肢3  ケガのため,翌日から連続して会社を休み,その間,給与の支払がなかった場合,Fさんは休業4 日目から傷病手当金を受けられる。  →正答 今回の事故について、Fさんは保険給付を受けることができますので、当然に傷病手当も受給することが出来ます。

選択肢4  Gさんがパートで働いており,仕事を休む場合,Gさんは傷病手当金を受けられる。  → まず、Gさんは選択肢1で述べたように、第三者行為による受傷のため、健康保険からの給付受けられません。よってこの選択肢は誤りと断言できます。さらに言うと、問題文の内容だけでは、Gさんの保険加入状況が分かりません。健康保険の被保険者であるか、被扶養者なのか。国民健康保険に加入しているのか。もしかしたら後期高齢者かも知れません。

選択肢5 業務起因性はどこからも読み取れない(行楽と書いてある)ですし、仮に通勤中・業務中であったとしても第三者行為なので給付されません。

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